【判例研究】憲法と租税法ー大嶋訴訟

判例等
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こんにちは。税法免除大学院に通いながら税理士を目指しているエリカです。

今回は、超重要判例の大嶋訴訟について、

判例研究の助けになるようにポイントをまとめてみました。

これから税法免除大学院で学習する方の参考になれば!

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事実の概要

X(原告・控訴人・上告人)は、D大学の教授で、昭和39年の収入金額は170万円余の給与収入と5万円余の雑収入であった。

Xには確定申告の義務があった※が履行しなかったため所轄税務署長Y(被告・被控訴人・被上告人)はXに対し課税総所得金額114万円余、税額20万円余、納付すべき税額5万円余という内容の決定処分及び無申告加算税5,700円の賦課決定処分をなした。

Xはこれらの処分の取り消しを求め出訴した。

※昭和40年改正前(以下、旧所得税法と表示する)の所得税法26条1項による

経過(判決)

第一審から上告までいずれもxの請求を棄却

Xの主張(争点)と判旨

xの主張判旨
主訴:旧所得税法における給与所得者に対する課税は憲法14条1項に違反しており無効である。本件は憲法第14条に違反しない
所得税法は事業所得に必要経費の控除を認めていながら、給与所得者にはそれを認めていないので不公平である。給与所得控除が概算経費控除の意味をもっているとしても、実際の経費の額が給与所得控除の額を上回っている場合に超過分の控除を認めないのは不合理である。事業所得等に対し、必要経費控除は、実額控除を認めているのに対し、給与所得については、給与所得控除として概算控除として認めている。
憲法14条は合理的理由なく差別することを禁止する趣旨であって、上記区別が合理性を有する限り、規定に違反するものではない。
給与所得の捕捉率と事業所得等の申告納税の対象たる所得の捕捉率との間には大きな軟差があり、給与所得者は著しく不利益な扱いを受けている事業所得等の捕捉率が相当期間にわたり給与所得の捕捉率を下回っていることは事実であり、租税公平主義の見地からその是正の努力は必要である。しかし、このような問題は原則的には税務行政の適正な執行により是正されるべき性質のものであって、租税法制そのものを違憲ならしめるものではない。
事業所得等については、合理的な理由のない各種の特別措置が設けられており、給与所得者は著しく不公平な税負担を負っている合理的理由のない租税優遇措置は、仮にその優遇措置が合理性を欠くものであるとしても、そのことは当該措置自体の有効性に影響を与えるにすぎず、その規定により課税規定を違憲無効にするとはいえない。

その後の影響

本件は、原告側の請求がすべて棄却される形にはなっているが、その後の法整備に大きく影響を与えている。

1.給与所得者の必要経費について実額控除は未だ認めていないが、代わりに昭和60年代の抜本的税制改革において、特定支出控除の制度が設けられた。

2.特別措置の整理合理化が進められ、平成22年改正では多くの特別措置が整理され、また、「租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律」が制定された。しかし他方で、たえず新しい特別措置が導入されており、その抜本的整理は困難な状況ではある。

3.所得の正確な把握のための措置として、昭和50年以降、納税者番号制度の導入が検討され、平成25年に税と社会保障の両方の分野で用いられる個人・法人識別番号制度(マイナンバー制度)が導入された。

解説

本件は、①租税立法に対する違憲審査の基準②租税法律主義③租税公平主義と給与所得の課税の3つの問題に関する判例として極めて重要な位置を占めている。

①租税立法に対する違憲審査の基準

裁判所は租税立法と憲法14条の関係においては、「その内容が明らかに不合理でない限り憲法違反にはならない」という意味での「ゆるやかな合理性の基準」を採用している。これは租税立法が国民経済において種々の重要な機能を果たしていること、総合的政策判断が必要であること、きわめて専門的・技術的な性質を持っていること等のためである。

しかしこのことは、租税立法が常に合憲と判断されるという意味ではない。

②租税法律主義

憲法84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と定めて租税法律主義を宣明している。国民に税負担に関する予測可能性と法的安定性を保障することを目的とする憲法原理であるが、本件では租税法律主義の内容について「課税要件及び租税の賦課徴収の手続は法律で明確に定めることが必要である」と述べて従前の判例の考え方を踏襲している。

③租税公平主義と給与所得の課税租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は、その立法目的が正当で、区別の態様が「著しく不合理であることが明らかでない限り」憲法14条1項に反するということはできないという一般論を述べた。

より詳しく研究するなら

以上が、簡単なまとめでした。

こちらは、主に租税判例百選を参考に作成しました。

より詳しく研究するなら、大嶋訴訟の載っている文献を以下にまとめたので参考にしてみてくださいね。

参考文献

金子宏『租税法 第24版』弘文堂(2021年)

中里実・佐藤英明・増井良啓・渋谷雅弘・渕圭吾編『租税判例百選 第7版』有斐閣(2021年)

増田良啓『租税法入門 第2版』有斐閣(2018年)

酒井克彦『二訂版 裁判例からみる所得税法』大蔵財務協会(2021年)

判例の出典情報((公財)日本税務研究センター 判例記事検索より一部抜粋)

※インターネット上で見れるものを抜粋しました。

・民集39-2-247

(裁判所のホームページの判例検索で判例集等巻・号・頁のところに上の数字を入れるとすぐ見つかります)


・訟務月報31-11-2894

※事件番号は「S55(行ツ)15」なのでこちらの条件絞込みで調べてみても◎

判例データベースはこちらの記事のもまとめているので参考に。

租税法関係の判例探しに利用できるデータベース5選
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図書館などでも資料を集めて研究すると、

より深い判例研究ができると思います。

大嶋訴訟は憲法と租税法の関係に言及した超重要判例です。

租税法の根本的な考え方にも通ずる判例なので、

しっかりおさえておきましょう。

※本記事は、参考文献をもとに、一部私見も混じえながら作成しています。

私もまだ一学生に過ぎず、勉強中の身でありますので、

こちらの記事はあくまで研究の足がかり・手がかりとして参考にしてください。

なお、本記事の無断転載(授業で利用するレジュメ含む)は禁止いたします。

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